2007.06.08

オススメ「フラワー・オブ・ライフ」

フラワー・オブ・ライフ (1)フラワー・オブ・ライフ (1)
よしなが ふみ

新書館 2004-04
売り上げランキング : 348

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「大奥」でびっくりさせられたよしながふみさんの近作の一つである「フラワー・オブ・ライフ」が4巻で完結したとのことで密かに狙っていた俺は全4巻をまとめ買い。

面白かった! 久々にこの休眠ブログを更新してしまうくらい俺好みの作品であった。読んだ後の熱が覚めてしまわぬうちに思うままに感想でも書いておこう。

4巻というサイズもあって、この作品はまるで巧みな細工のなされた小箱のようだ。

ジャンル的にいえばいわゆる学園モノ。そこにはある意味お約束ともいえる「楽園」が存在する。味のあるキャラクター、テンポのいい展開と台詞回しでしこたま笑わせてくれる。
特に真島の生態(?)については明らかに作者本人が楽しんで描いてるんじゃないだろうか。軽い自虐を含めつつ……。

ただここは普遍の楽園ではなかった。
彼らは日々お互いを知り、変わり、また変わりながら関係し続けている。

よしながふみという人はなんでこんなに人と人の関係を描くのがうまいんだろう。特に人間関係の対比と転換、入れ替えを。
物語は「外部イベント」によって起きるのでなく、そこにある人間関係の微妙な変化によって作り出される。
たった一つの出来事やたった一言だけでシチュエーションは大逆転を起こしてしまう。小柳とシゲ、シゲと真島、真島と春太郎、春太郎と三国。いろんな人と人の組み合わせの中で気が付けばポジションが入れ替わり、その変化に振り回され、励まされ、時に苦悩する。
読み返してみると最初と最後が見事に裏返しで繋がっているのがわかる。その変化を切なく、懐かしく受け止めながらこの物語の余韻に浸るのだ。


あまり多く読んではいないのだけど、よしながふみのマンガの印象は比較的淡々と展開させ、またキャラクター達を愛しつつも突き放しているように感じるところだ。それはやはり計算づくの役割配置によるものだろうか。キャラクターそれぞれが自分自身を一側面から見た分身であるからこそ持てる距離感なのかも。

読み終えた後、なんだか自分の中で盛り上がってしまい、つい吉田秋生の「河よりも長くゆるやかに」まで読み返してしまった。こちらは未完(だよな)だし、毛色は違うが何だか似通ったものを感じたのだろう。こちらも俺的に超のつくお気に入りなので未読の方は是非。

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2007.01.30

俺の少女まんが道

漫画系WEBサイト界隈では最近「乙男」(菅野文)があちこちで話題になっている。出張中につきまだ読んでないのだが、オトメン、少女漫画好きの男子の話らしい。

それに触発されてか、ふと自分の少女マンガ遍歴を思い返してみた。

姉がいたこともあって、あまり抵抗なく結構な量の少女漫画を読んできた。特に一番歳の近かった姉は最低にも「借りたらそのまま」系だったのか人から借りたのであろう漫画本が部屋にいつまでも転がっていたような気がする。
でも思い返すとあったのは「スケバン刑事」「超少女あすか」(和田慎二)やら「エリート狂想曲」(弓月光)とかある意味偏ってたような……。単に俺がそのへんだけ好きで他のを覚えてないだけかも。

俺の基本はコロコロ⇒ジャンプ⇒スピリッツ世代でちゃんと毎号買っていたからマンガベースは少年誌系なのだが、中学の頃だったかに一時期姉が買っていた「Lala」(と時々「花とゆめ」)を読んだあたりからボーダーが崩れ始める。
あれは成田美名子の「CIPHER」が始まる頃だったろうか。ほぼ毎号読んでたのでその頃の作品は覚えている。個人的には短期ながら吉田秋生の「櫻の園」がえらく気に入ったような。事実今でも一番好きなランクに入る作品だ。
当時のLala作品で他に記憶にあるものは「シニカルヒステリーアワー」「ルイ君に乾杯」「朱鷺色三角&パッションパレード」などなど……と作品名思い出しついでにググってみたら「糸納豆ホームページ」さんのコンテンツに月刊LaLaインデックスなるすばらしいリンクを発見。ありがたい。そうそう、俺が読んでたのは大体この頃だ。

このへんから雑誌別でなく作家別に読む読まないのジャッジがされるようになっていった。とともに徐々に雑誌ベースからコミックスベースに切り替わっていく。上記リンクで振り返るとやっぱり作者の広がり起点は白泉社系なのだとわかる。
その後、実家から出て雑誌読めなくなると気になる作者については自分でチェックを入れることになる。吉田秋生、大島弓子、わかつきめぐみ、樹なつみあたりは今に至ってもフォローしてたりする。息が長いなぁ。吉田秋生は「BANANA FISH」でハマってすぐコミックス揃えてたけど。

もちろん、それだけにとどまるはずもなく、ジャケ買いも含めてフォロー作者はどんどん増えていくことになる。そして極めつけがメーリングリスト。実家を出た頃……当時まだインターネットが大学や一部企業だけの存在で、NetNews上では某氏達が日々絶え間ない舌戦(?)を繰り広げてたりした頃だ。当時メジャーな趣味のコミュニケーションの手段のひとつはMLだった。
とある漫画系のMLに入った俺は躊躇なく先達に情報を求めた。それほど活発なMLではなかったがそれでも山のように作品名が挙げられていく。特に古めの名作達がぞろぞろと。
そもそも書店で不遇な扱いをされ易い少女漫画たち、当然店頭に残ってるわけもなく、日々古本屋をめぐっては制覇していく……。悲しくも嬉しいことに古本屋でも大抵不遇の扱いで1冊100円以下で叩き売られていることが多く助かった。

ちなみにどんなオススメがあったかを覚えている範囲でいうと

「花ぶらんこゆれて…」(太刀掛秀子)
「セッチシリーズ」(沖倉利津子)
「陽の末裔」(市川ジュン)
「前略ミルクハウス」(川原由美子)
「はみだしっ子」(三原順)
「ライジング!」(藤田和子)
「デザイナー」他、一条ゆかり全般
「森子物語」他、岩館真理子全般
「花岡ちゃんの夏休み」他、清原なつの全般
「お父さんは心配性」他、岡田あーみん全般
「フランス窓便り」他、田渕由美子全般
「こんぺい荘のフランソワ」他、陸奥A子全般
「妖精国の騎士」他、中山星香全般

……正直にいうと途中からごっそりググりました。あえて古めのものを選んでみた。もちろんMLでは古今の作品を知ったのだが「こんな昔にこんな作品が」というインパクトはやはり大きかった。当時所有のコミックリストがすでにないのが惜しいな。

この頃の古本屋往復の日々は正直楽しかった。当然だ、毎日のように名作が読めるのだ。そりゃたまらんって。たしか竹本泉もこのへんから。当時はまだマニア誌の進出が少なかったので少女漫画家の扱いだった。竹本泉のMLでは「あんみつ姫」など所持済みレア本を見つけてはMLのメンバ同士で実費で分け合ったのも懐かしい思い出だ。
内田善美もここで聞いてなければ存在さえ知らなかっただろう。自分的ランクトップクラスの「草迷宮・草空間」他珠玉の作品を読んでなかったとしたら大損失だったろう。坂田靖子は作品数が多すぎて財布的にも泣いた。個人的には「天花粉」「珍見異聞」とかの和風なものや「マーガレットとご主人の底抜け珍道中」とか好きだ。

そして何より萩尾望都の作品群の衝撃
俺が全然知らない間に世には「こんな作品が世に出ていたのか」という衝撃だ。SFな話が好きだったのもあってずぶずぶとハマっていった。
夢枕獏氏が少女漫画について書いたエッセイか何かでこれだけの文化を知らなかったことに恐怖した、みたいなことを書いてた気がする(記憶自信なし)が、まさにそれである。少年誌系で得られないエッセンスが、物語が確実にそこにはあった。
今では雑誌掲載内容もかなりジャンルがオーバーラップしているのでこれほど極端なことはないのだろうけど、少年誌培養で育った者には刺激的な世界だったのだ。この時期に消費するように一気に読んで一気に忘れてしまってるのも多い気がする。もったいない。リアルタイムで雑誌で毎回待ってた人はキャラ名までいつまでも覚えてたりするもんなぁ。

もちろんこの時期読んで気に入った作者はフォローリストに入るわけで毎月の購入コミック数はがんがんと増えていく。これに当然少女漫画系以外も加わり、さらにパソコン通信での新ネタも入って購入冊数は泥沼化していく……。

今ではかなり絞って買うようになってしまったが、それでも時折対象範囲を広げては絞り込みを繰り返してまんが(読み)道は続く。最近は自分で発掘するというよりマンガ系WEBサイト/ニュースサイトさんたちに頼りっぱなし。ホントありがたい存在です。
何かの縁があれば皆様、古いのも新しいのもひっくるめてぜひこっちの世界にも飛び込んで頂きたい。

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2005.12.10

オススメ『シガテラ』

4063611930シガテラ 1 (1)
古谷 実

講談社 2003-12-25
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写真メインの壱知拾忘の方は時々更新してるけど、えらい長いことこちらを更新してなかった。更新が途絶えたあたりからほとんど福岡にいない状態で、ほとんどは長期出張中だった。いや、だったでなく今もそうなのだが。

出張中はたまに休みが取れたとしてもギターもカメラも手元にない。かといって本を買いまくって荷物を増やしたくもない。ちょっとした休みの日の空き時間にホテルの近所のマンガ喫茶で読みたいと思いながら後回しにしてた本を漁るのが楽しみになってきた。固定作者の本を買うばっかりで新規開拓してなかったしなあ。

さて、前置きが長くなったが、そんな風にしてマンガ喫茶で読んだ本から気に入って結局今日、後で荷物増えるの覚悟で買ってしまった作品をオススメしたい。今日なんて夜勤前だってのに睡眠時間削って再読してしまった。眠いよ……。

そんなわけで今回のオススメは古谷実の「シガテラ」だ。
作者については「稲中卓球部」の人といった方が一般的には通りがいいのかもしれない。氏は稲中の後、ギャグ、シリアス作品を経て、この「シガテラ」へたどり着いた。聞きなれないこのタイトルが意味するところはちょっとググってみると主に南方の魚が元々もってない毒素をプランクトンなどから体内へ蓄積し、それが食物連鎖でより大きな魚へ、そして人間へと集積されることで起こす中毒症のようだ。
「死に至ることは少ないけれど知らず知らず摂取され、残留する微量の毒による中毒症」という意味合いだと思われる。

物語はいじめに合う荻野がバイクの免許を取ろうとするところから始まる。それは苦しい日常からバイクという象徴を介しての逃避だったのかもしれない。そしてそこから日常に変化があらわれていく。
どこかにいそうな人々、そして今もどこかで同じ状況があるだろうシチュエーションの中で、些細な出来事の重なりが時に大きなうねりとなり、そしてまた消えていく。
……と特に細かくあらすじを書くつもりはないので、こっから先はもう勢いのまま好きに書く。微妙にネタバレするところもあるかも。

俺がこの「シガテラ」にここまでひきつけられたのは何故だろうか。
もともと分類が結構難しい作品ではある。コメディ要素も入ってはいるが、それがメインではないし、もともとストーリーとしては暗い傾向にある。各要素のウエイトは統一されていない、又は敢えてしていない感は受ける。狙いかどうはわからないが逆にそれがこの時期特有のごちゃ混ぜ感になっていていいんじゃないかとも思う。

荻野にとって、そしてこの作品と読み手にとっても大きな要素を占めるのが南雲さんとの出会いだろう。棚ボタ的に彼女とつきあうことになった荻野のおろおろ加減、そしてそのあまりに大きなウェイトは、格別ぱっとしない人生を辿ってきたコンプレックス者には染み入るものだ(涙) 南雲さんの言葉や仕草、表情、として二人のやりとりに自分の場合を思い返す人は多いだろう。多少の違いやデフォルメはあれど、そこには恋愛の共通事項がある。はじまりにしかない貴重な思いと一生残る瞬間たちがある。
荻野自体も実は面白い。単なるいじめられっ子に見えて、時折見せるヘンなところはいわゆる「バタ金」的主人公像を受け継いでいる面もある。妄想や思考の暴走ぶりは稲中の頃からのセンスが垣間見えておかしい。荻野の中の前野を見ることだって出来るだろう。

映像化されたとしてそのBGMには凄く似合わないかもしれないがこの作品に含まれる要素は実はスピッツが非常に合うのではないかと思ってたりする。少なくとも俺にとってのスピッツの歌の根本は「性と生と死」と「無常と諦観」そして「自己閉塞と出会いによる時には逃避的な解放」だ。あとつけ加えるなら「おっぱい」!
シガテラはこれら要素をふんだんに含んでいる。(大抵の作品はそうだろって話もあるかもしれないケド) 読んだことがあるかどうか知らないが、読んでみたらマサムネさん、大好きなんじゃないだろうか。凄く勝手な推測だけど。

話が飛んでしまうが音楽繋がりでもう一つ。水戸華之介さんの「偶然にも明るい方へ」という歌がある。俺はこの歌がかなり好きでよく頭の中でリフレインしたりする。その都度「ホントにそうだなぁ」と思うのだ。
いま自分がいる場所はあらかじめ決まっていた場所だろうか。そして自分が選んだ場所だろうか。否、だと俺は思う。どちらに転んでもおかしくない瞬間はいくつもあったはずだ。あの時一歩違う方向へ踏み出していたら全く違うところにいたかもしれない。あそこであいつがああしてくれてたら、してくれなかったら。あの場所にいたら、いなかったら。そしてあの人に出会っていたら、いなければ……。
カオス理論てわけでもないが、何億回と振られたサイコロのたった一回で全然違う道へ進むことがある。しょうがないことだらけの中で自分で選べることなんて実はほんのわずかだ。ほどんどは誰かがやる気もなく振ってるだけかもしれないいいかげんなサイコロに隷属している。
だが今少なくとも「そうだったよなぁ」と昔を振り返れる程度には最悪の場所にはいない。全てがベストの状態からはほど遠いかもしれないが、こうしてなんとか笑いを忘れることなく日々を暮らしている。そう、まさに偶然にも明るい方へ。その偶然に感謝し、やるべきこともある。

「シガテラ」を読んだときもまた似た何かを感じた。
荻野や南雲さんの周囲には何人もの「ぎりぎりな人」たちが現われる。踏み外すかどうかはほんのちょっとのきっかけでその渦中に飲み込まれるかどうかもまたほんのちょっとのタイミングの違いでしかない。
わずかなサイコロの目の違いで大きく道を逸れた者がいる。自分の意思と関係なくどうしようもない状態に陥ったりもする。幸運な出会いをし、いつの間にやら災難から離れていることもある。忘れている頃に災難が戻ってきやがることだってある。
そんな無力感の中で自己嫌悪や諦めとその裏返しのなけなしのプライドと期待とに右往左往し、自身への不信から手に入れた大事なものさえ不安の種となっていたあの頃。

そして今、やりすごしたのかどうかはわからないがなんとか息の出来る場所にいる。「しょうがないこと」や「つまらないこと」、「思うようにならないこと」は消え去りもせず近くにあふれているがそれは普通にそこにあるものになってしまった。見ないフリも出来るし、対峙しても大抵は適当なところで折り合いをつけることだって出来るだろう。そうだ、もう自分が普通でその力の及ぶ範囲も受ける影響の範囲もまた普通であることをわかってしまっている。少なくともわかったつもりになることで安定することが出来る。
そんな手軽で器用な真似が出来なかった馬鹿な「あの頃」への思い。それが俺を捕えて離さない。あの頃は過ぎ去っていても消え去ってはいない。比率はわずかでも消えることなく自分の中に残っている。これからも残り続けていくのだ。読みかえすたびに俺の中に奇妙なモヤモヤがくすぶる。それは自分の中にも蓄積されているシガテラ毒がこの作品に呼応しているからに他ならない。

んでもって俺はむちゃくちゃ弱いのだ、こういうのに。安達哲の「キラキラ!」「さくらの唄」やナツカシの「バタ金」。最後の急展開含め、ヤンマガはこうじゃなきゃっていうか(意味不明)
この「シガテラ」を読んでしまったので立て続けに「僕といっしょ」「グリーンヒル」「ヒミズ」「稲中」も読んでしまった。他のもいいなぁ。特に「グリーンヒル」はなんかツボに入ってしまった。 各作品で方向性は違って見えるが、どれもまごうことなき青春マンガだ。

最後に「シガテラ」で一番重要なこと。

「南雲さんかわいいなぁ」

もう、この一点だけででもオススメしまっせ。

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2004.12.04

オススメ『よつばと!』

よつばと! (1)
あずま きよひこ

メディアワークス
2003-08-27
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今回のオススメ漫画はあずまきよひこ『よつばと!』。最近3巻が発売され、やっぱり面白かったのでご紹介。気合入れて語ること自体がこの作品のフィーリングと反する気もするのでさらりと紹介しよう。

ある日ある町へ引越ししてきた女の子「よつば」とその「とーちゃん」。ちょっと特殊な事情があるようだが、そんなことに関係なく元気一杯な「よつば」と「とーちゃん」やご近所さん達とのほぼ普通な日常が描かれている。いや、ホントにそれだけ。

前作「あずまんが大王」から引き継がれた「間」の取り方のうまさと溢れるセンスは相変わらず絶品……というか4コマの制約から離れてさらに磨きがかかっている。
絵は一見マニア寄りに見えるかもしれないが、それほどクセが強い絵ではないし、安定して上手いので読み始めてみれば受け入れてくれる層は結構広いかもしれない。
あらすじに書いた通り、この作品では大きな事件などは発生しない。基本的にその辺で起こってるかもしれない日常レベルの出来事の中でのよつばとその周りの人々が淡々と描かれている。そしてそれがミョーに面白い。

たまに犬や猫の視点になって描かれた作品を見かけるが、この作品ではよつばというフィルターを通して世界を見つめるという体験が出来る。子供だった頃にみんなが持っていたはずの世界への新鮮な驚き、不思議な決まりへの疑問、子供独特の論理展開。これらがちょっとしたエピソードの中で表現されている。それが自分の忘れかけていた記憶とリンクして呼び起こされるのか、読んでいてどことなく懐かしさと温かさを感じるのだ。
そういう違った視点を持って作品を描くことは難しいことだ。動物視点のものでさえ、ちょっと自分の中の認識から逸脱するとわざとらしい感じがしてしまうものだ。子供視点ならなおさら難しいはずだ。なんせみんな子供だった経験があるのだから。少しでも違和感を感じたらあっという間に全体がわざとらしいものに見えてしまう。
この作品の中ではよつばをちょっと変わった子にしているのも大きな助けではあるだろうが、それでもわざとらしさを感じさせずに気持ちよく読ませてくれる。これはきっと大変なことだ。

そういう作品中での自然さ加減はキャラクター全般に言える。
最初だけ一旦それぞれの人となりをいくつかのエピソードで定着させる。その後彼らは物語に沿って、もしくは物語を進めるために演技しているのではなく、元々そういう人で、ああ言われたらそう言うだろうなという反応を素直にしているだけに見える。そんなキャラクターが現実にいる、いないでなく、作品内での一貫性があり、各キャラが作品内での存在感というか実在感を持っているということだ。
また、セリフの細かいところで普段の彼らの作中に見えてない普段の生活が垣間見えたりする。それも彼らの実在感への肉付けとなっているのだろう。丁寧に作られているなぁ、という印象がある。
作者はその作中の人間関係の中で人物とシチュエーション配置、そしてイベント投下を極めて巧みに行う。あとは投下したイベントという玉が配置された人の間を転がり、自然と話が進んでいくのだ。

ある意味、前にオススメした「バカ姉弟」と同ジャンルかもしれない。主人公にちょっとした謎というか背景はあるにしろ、それは重要な要素ではない。ただ彼らが存在していて、彼らの住むちょっぴりおかしな日常をそっと覗かせてもらう楽しさ。これに尽きる。

と、思ったよりぐたぐたと書いてしまったのでこのへんで。気軽につい何度も手にとって読んでしまうような本なので、気負いせずに読むのが吉。
氏の前作となる4コマコメディ「あずまんが大王」も面白いので合わせてオススメ。

あずまんが大王 (1)
あずま きよひこ

メディアワークス
2000-02
売り上げランキング 716

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2004.11.02

オススメ『うしおととら』

うしおととら (1)
藤田 和日郎

小学館
1990-11
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出張から帰ってきて、ここの更新もせずに飯と犬の散歩と惰眠以外のほとんどの時間を「うしおととら」全33巻の一気読みに費やしてしまった。でも満足。
そんなわけで、今回は軽く「うしおととら」のレビューでも。

連載当時は万年金欠学生で、マンガ雑誌は買わずにコンビニや定食屋で飛び飛びで読んでいた。それで大体の筋は知っていたのだがこうして落ち着いてまとめて読むとやはり味わいが全然違う。伏線とか全然覚えてなかったしなぁ。
この「うしおととら」が嫌い、という人をこれまでほとんど見たことがない。いわゆる少年漫画系の絵で読む前から敬遠する人はいるかもしれないが、読んでみてつまらなかった、という人に連載当時、完結後を通して実生活でもパソ通時代を含め出会った記憶がない。いや、わざわざみんなに聞いてまわってたわけではないけども……。
サンデー名作ミュージアムとかにも入ってるくらいなのでみんな知ってるかと思いきや、作品知名度は意外と低いような気もする。アニメ化されなかったからかな? そういう意味では不思議なスタンスにいる作品だ。

んで、この藤田和日郎氏の「うしおととら」はサンデーに連載されていた少年マンガである。
詳しいあらすじはさきほどのリンク先にもあるので簡単に言うと、平凡な日々を送っていた中学生「潮」がある日、寺の地下で友達を助けるという交換条件で槍に封じられていた妖怪を解放してしまう。解放してしまった妖を封じたいうしおと隙を見てうしおを食らおうとするとらの奇妙な共同生活(?)が始まり、とらを封じていた「獣の槍」と「白面の者」という存在との因縁に巻き込まれていく。というものだ。

もー、どっからどー見ても少年漫画って感じ。
といいつつ少年漫画とは何か、なんて議論をしたいわけじゃないので卑怯にも個人的印象によるキーワードの羅列だけしてしまおう。
「成長、強くなる」「ヒロイン」「男ならば(熱め)」「臭いセリフ」「友情」「信頼」「対決」「仲間」「前向き」「目で語れ」「大ゴマ」「変化(へんげ)」……。
更にサンデー的には「萌え系サブヒロイン」「気づかずモテモテ」「幼馴染」などのキーワードも追加しておきたい。

これらからいくつかピックアップしながら魅力を探ってみよう。

【大ゴマ】
表現的なことだが、「うしおととら」の中で効果的に用いられているのが1ページまるごとや見開きを使った大きなコマでのババーン!と迫力のある描写だろう。ポーズや陰影なども気合が入っている。
これにはかなりこだわりというか魂を注いでいるのではないかと思う。それは「どうしたらこいつらのカッコ良さを表現できるか」という一点に集約される。対象はうしおやとらだけでない、サブキャラ、敵対する者に至るまで魅せてやろうという意気を感じる。
カッコいいうしおに、とらに、白面の者の禍々しさに、次々と現れる「凄い奴ら」に大ゴマでシビれて欲しい。
ちなみに「うしおととら」の後の作品である「からくりサーカス」でも確か初回に「しろがね」という女性キャラの印象的かつ幻想的な見開きページがあったような記憶がある。その絵一発でその作品世界のイメージをぶつける、そんな意志の入ったページだったと思う。

【目で語れ】
ついでなので描写系をもうひとつ。
少女マンガ系との大きな違いの一つは目や眉の描き方ではないかと思う。もちろん、お互いいろんな表現があるが、全体的には少女マンガ系には人間として逸脱しない程度での表現が多い。デフォルメ的な表現よりも微妙な心理変化を表現する繊細な目を描く。
ま、マヤさんや亜弓さん、キャロルさんやメンフィスさんみたいに白目むいたりするおおらかな表現のもありますが……。
うしおととらや他の少年漫画系の一部での過剰表現は目で言葉以上の何かを語らせようという意図が見える。それは時に曇りのない意志の強さ、時に逸脱した狂気を描き出す。「哲」の異常系キャラの目もそうだろうし、眉毛だって元々顔から飛び出してても構わないのだ。
一気読みした後しばらくたってもうしおの目が脳裏に残る。変わらない力、変えるための力。それを蓄えた目を覗いてみて欲しい。

【男ならば……】
これは他のキーワードとも関連するのだが、男であるからにはヒロイン達を、そして見知らぬ人々を守るのだ。それがヒーローに与えられた普遍の役割である。
うしおととらは旅の先々でいろんな人と会い、いろんなヒロイン達と出会う。それは人だったり妖だったり様々だが、その負った苦しみを取り払うためにヒーローはいる。守るためには強くあらねばならぬ。時に傷つき、己の非力に泣きながら成長を続けていくのだ。この系の少年漫画における「強くなる」ことは必要不可欠な要素の一つだ。諦めるな、立ち上がれ、そして勝つ。
そんな風に彼らを見守りながら自分を重ねて俺らマンガ少年は育ってきた。俺は残念ながら「うしおととら」の頃には少年じゃなかった気がするが「やっぱこうじゃないとね!」と改めて思う。

【モテモテ】
もしかしたら好きなマンガとしてこの「うしおととら」と共通してる人が多いかもしれないが、通しで読んでいて思い出したのが長谷川裕一氏の「マップス」だ。こちらはSF冒険モノであるが、あれこれと似たものを感じる。
謎に包まれた大きな戦いの中へ否応なく身を投じていくことやサブキャラ達との関わり方、主人公のまっすぐさ。そしてサブヒロイン達にモテモテなところもだ。ただしマップスの方がエロ加減では幾分勝っていると思われる。(何の勝負だよ) 
萌えと燃えの比率は微妙に違うかもしれないが、異なる二つの存在が悪口いいあいながらも誰にも代えられぬパートナーとなってとてつもないパワーを生み出していく姿が重なるのだろうか。

【二つの変化(へんげ)】
うしおが獣の槍を手にする。一瞬にして髪はのび、その振り乱す髪の奥から鋭く力強い目がのぞく。それは超越した力を手にした証なのだ。正義感の強い中学生から槍の使い手への変貌、そしてゾクゾクするようなパワーと高揚。それは変身ヒーロー物的なワクワク感をもたらす。
そしてもう一つ重要なのは彼らが変化をもたらすものであるということだ。うしおは自らを変化させるのみにとどまらず、そのまっすぐなチカラで周囲をも変えていく。諦めを希望に、憎しみを慈しみへと。
周囲への変化をもたらす爽やかな風。それが前述のマップスのゲンと一番重なるところでもあり、揺ぎ無いヒーロー像の根幹を成しているのかもしれない。
うしおととらはこの二つの変化により構成されている。与えた変化の積み重ねがさらなるドラマを産んでいくのだ。


……今気づいたがオススメっつーより読書感想文みたいになってるな。いかんいかん。あまり部分だけ取り出して考えても仕方ないのかもしれない。
味のあるキャラクター達を乗せてうねりゆくストーリー本編もこの作品の見所だ。徐々に明らかになる謎、そして波乱の展開。どこまでが元々あった設定で、どこから追加されたものなのかはわからないが、破綻することなくストーリーはまとまっている。特にラスト付近での怒涛の展開には目を離せなくなるだろう。
そして本筋(獣の槍や白面の者関連)以外のいわゆる短編妖怪退治モノとしてのエピソードも面白い。それはうしおととらというキャラクターの魅力も勿論だが、エピソードに出てくる妖が単なる退治され役でなく、しっかりとメインキャラクターとして描かれているからだ。彼らの持つバックグラウンドは川口まどかの「死と彼女と僕」での霊達と同じように時に非情でエグく、時に切なくまた悲しい。
あと、いや~なシチュエーションで現れる衾や山魚などの存在感。そういうところが面白くさせている。本編の展開どうとかより「サトリ」の話が好きだ、なんて人もいるだろう。

紫暮やヒョウなどの親父系キャラのカッコよさとか他にも触れたいことはあるが、思ったより長くなってきてるのでこのへんで。「うしおととら」はキャラクター、ストーリー、伝えるための画力が高いバランスでまとまった作品だ。
読み始めたらきっとあっという間の33冊になる。仕事に差し支えないようにご注意を!(ってそりゃ俺か?)

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2004.08.19

オススメ『プラネテス』

書こうと思ってからいつのまにかえらく時間が経ってしまった。
オススメシリーズ、今回は幸村誠『プラネテス』である。コミックは1巻~4巻まで発売されており、4巻でひとまず第一部完となっている。
(今回から「無意味なブログを検出しました!」さんの記事を参考にちゃんとオススメしたもののイメージ&購入先リンクが出来るようにしてみました)

かなり前になってしまったが、BSマンガ夜話で星野之宣がとりあげられ、たまたまそれを見ていてSF欲がじわじわ来ていた。ちょうどその頃、俺ブンさんの記事でこのプラネテスの紹介があり、これも何かの縁だろうとまず1巻だけ購入して読んだ。見事に気にいって残りは翌日一気購入だ。
これを知らないままでいたってのはいかに最近マンガアンテナを張ってないかがわかるなぁ。購読マンガ雑誌ゼロだし…。
ちょうどちょい前からNHKでアニメ版の再放送も始まっているようだ。またしても頭の数話は観そびれてしまったが、途中から観ている。こちらはまたマンガとは違った楽しみ方が出来そうだ。ちらりと見た限りでもさすがNHKというべきか、映像のクオリティは高そうな感じ。

さて、紹介ということで一応簡単にあらすじを。

少し未来の2074年。宇宙…といっても地球周回軌道上に廃棄された衛星などの宇宙ゴミ(デブリ)を回収する仕事を生業とする人たちがいた。
そこで働く人々のそれぞれの思いと、中でもハチマキという青年が宇宙飛行士、そして人間として成長していく姿が描かれている。

宇宙、ロケット…。それは少年時代の代表的ロマンの一つである。おそらく多くの人が経験したであろう遥かなる高みへの憧れ。しまいにゃ『宇宙』と書いて『そら』って読んじゃうぜ。
この作品を読んでいて『アストロノーツ』(史村翔+沖一)や『オネアミスの翼~王立宇宙軍』(GAINAX)などが駆け巡った人もいるだろう。特にラストのハチマキのセリフとか…。
前者はもっとマッチョアメリカンな印象、後者はもっと淡々としていたような気がするけど、同じように思い出しちゃった人はきっとほぼ同年代ですね。あの頃を思い出しつつ、少々青臭気味に考えてみよう。

現実世界もいつの間にやら誰もが夢見た21世紀になったが、普及型エアーカーも光るチューブのハイウェイもバーバラセクサロイドもまだない。なのに、はるか頭上には俺らの知らないいくつもの衛星が飛び回っている。

宇宙はロマンか、廃棄ゴミの漂う人間生活の延長なのか。
この作品のリアリティはエネルギー問題の解決として宇宙資源に頼っている状況、それによる宇宙需要の増加という背景に基づく。そしてその結果として実際に問題になるだろう宇宙ゴミの存在やそれを兵器として利用する可能性などもまたリアリティを持って語られる。逆に地球上の人々の生活は敢えて(?)基本的にほとんど今と変わってないように描かれているみたいだ。(ハチマキ家だけかもしれないが…)

これだけしっかりしたSF的な設定を背景にしながら、話のメインはあくまで人間についてなのが一番の特徴かもしれない。
単に宇宙やSF的なことを描きたいのではない。あくまで『人と宇宙の関わり』を描きたかったのだろう。テーマとして特に目新しいとは言えないのかもしれないがいつまでもこういう作品が生み出され続けて欲しい。(さらにいえば「もっとフィー姉さんの話読みてぇ」とか……)

メインストーリーはハチマキ関連だが、最初のユーリの切ないエピソードやテロを巡る話、そして随所に散りばめられた名セリフ、タナベというキャラクター等と見所はたくさんだ。是非手にとって読んで欲しい作品だ。


以下はちょっとネタバレというか勝手な感想なのでまだ読んでない方はスルーして欲しいところだが、この作品を読んで一番気になるキーワード「境界」についてだ。まとまった考えでもないのでだらだら書く。

前述の通り、エネルギー問題を時代背景として人類が宇宙へ日常的な進出を果していることになっている。しかし宇宙はまだ「特別な場所」でもあることが伺える。地球という「生活の場」と宇宙という「特殊空間」の境目。だが「そんな境目なんてない」とユーリはいう。
境界はそれだけではない。ハチマキは「自分と宇宙の境界」「生と死の境界」について突きつけられ、それがないに等しいことを知る。あまりに急激に大局的な視点を得たこと、境界を失ったことで自分の存在をも見失ってしまう。
宇宙との一体感は孤独や恐怖から離脱させてくれるかもしれないが決して「幸せ」をもたらしてくれる訳ではない。それは詭弁のようだが、人間もまた宇宙であるが、人間は人間でもあるからだろう。
境界がないのに特殊だと思うのは人がそこに自ら境界を作り出しているからに他ならない。人が日常的に宇宙で暮らしていくこと、そこに必要な根源的なものは…つまるところはそれがハチマキのセリフになるのだろう。「人間」という漢字の組み合わせはよく出来ているものだ。

わかりやすくするためかタナベによる女性的印象とハチマキによる男性的印象を持たせてあるが、人を突き動かす何か、人によりベクトルは違えど、根源は同じものである「腹の底にあるチカラ」もこの作品のキーワードの一つだろう。
そこから出るパワーが螺旋状であるなら外へ向う力と内へ向う力は共存している。なんていったら観念的すぎてアレ風味だけども……。
「自分の今いる場所から飛び出したい思い」と「いるべき場所、帰るべき場所への思い」、ちらっと細野不二彦の「BLOW UP!」とかを思い出してしまう(古っ)。全くジャンルは異なるがどちらも成長の物語である。

最後に俺が好きなシーンを。
宇宙という暗黒空間で死にかけ、恐怖に憑り付かれたハチマキがそこから抜けだすきっかけとなるシーンがある。
それはさらに遥かな星まで運ぶだろう新型エンジンとの出会い。俺はあの電気が走るような瞬間が好きだ。
世界を、自分のいる場所を大きく変えるだろう何かに出合った瞬間。そして自分にも何かやれそうな予感でもある。不安や自分への疑いを乗り越えるチカラ。その対象は違えどそれはきっと一度は皆が出会う瞬間ではないだろうか。その時の感覚を、こみあげる静かなチカラを思い出させてくれるのだ。



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2004.07.13

安永航一郎の壁

本来ならいつもの『オススメ』シリーズにするところだが、ちょっと迷うところがあって別枠の扱いとする。

コミックについてはかなりの部分を同居人とシェアしている。元々はそれぞれで買っていた作者についても今ではほとんどお互いで読みまわしている。本屋で新刊を見かけたら先に見つけた方が買うなんてことも多い。
しかし同居人は安永航一郎については何故か俺がいくら薦めても読みやがらねぇのである。そのへんも踏まえて、今回は別枠での紹介となった。

さて、安永航一郎といえば「県立地球防衛軍」「巨乳ハンター」などの名作を生み出し、現在は「火星人刑事」を連載している、のか中断してるのか不明。「超感覚ANALマン」も……どうなってるんだろう。(コミックスフォロワーなので雑誌状況疎くて申し訳ない)

えらく微妙なタイトル紹介になってしまったが、氏のマンガの特色をキーワードで表すならば

『すね毛』 『変態』 『変人』 『ぽん酢』 『筋肉』 『ローカル』 『シモネタ』 『キワネタ』 …

あっ、お客さん、ここでもうお帰りですか、そうですか。

確かにマンガのタイトルとキーワードだけで一部には引かれてしまう運命を背負っているのかもしれない。

俺が最初に読んだのは「県立地球防衛軍」だった。この作品で繰り広げられる超ローカルなエリア内で行われる悪の電柱組の変態達と防衛軍の変人達のしょーもない戦いの数々。作品自体やキャラクター自体をもあざ笑うストーリー展開。
スラップスティック系のギャグ漫画は古くからあるがそれともなんだかちょっぴり微妙に違う場所にあるような気がするマンガだった。

その後の作品もどんどん酷くなっていく(いい意味で?)。デビューから止まることない疾走感。魅力的(?)な変態たち、しょうもない設定やネタ、想像のつかない展開に危ない時事ネタ、多方面からのパロディネタ…。
これらがツボにハマると妙におかしい。こんなネタ使って大丈夫なんか、と思うことも多々ある。

養老センセの『バカの壁』がベストセラーになってるとのことだが(俺は唯脳論とか対談集くらいしか読んでないけど)、『素晴らしくバカっぽいモノを拒否する壁』も存在しているのかもしれない。もったいないもったいない。そんな魅力を持った作家なのである。なのであるが、万人向けでないことは認めますとも、ええ、ええ。

そういえば巨乳ハンターは実写映画化(ビデオのみ?)されたはずなんだけど、ついぞビデオ屋で見た覚えがない。どんなだったんだろう。



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2004.03.27

オススメ『バカ姉弟』

ちょっと前に「バカ姉弟」の3巻が出ていたのだが、先週ようやく読むことが出来た。この作品も今要チェックの一冊だろう。

安達哲といえば俺の思春期に『ホワイトアルバム』や『キラキラ!』で切なくさせてくれた作者だが、その後『さくらの唄』や『お天気お姉さん』『幸せのひこうき雲』と爆発していった。『キラキラ!』の後半あたりから片鱗はあったものの、その後のブレイクぶりはスゴい。特に『さくらの唄』は読んだ当時かなりキた。誤魔化しなく描かれる暗い現実、そして残酷な人そのものの姿、
内なる暗闇。それは強烈な傷を刻むように読んだ者に跡を残していく。いろんな意味でドキドキしながら読んだ本だった。
今回はメインの対象じゃないのですが、夢見る世の男子は覚悟を決めて是非とも読んでくださいまし。女性からはどういう作品に見えるんでしょうね、これ。

さて、そんな作品群に軽いトラウマになりかけつつも「この人から目離しちゃいけん!」と思っていたら、いつのまにか当の本人はさらりとこの『バカ姉弟』に辿り着いていた。

この本の魅力を何と言えばいいのだろう。
オールカラーで綴られる、とある姉弟の日常とそれをとりまく人々の姿を綴ったものである。これだけじゃワケわかりませんが、そういう話なのである。
二人についてわかる情報は実はかなり少ない。親が不在にすることが多く普段ほとんど姉弟二人で暮らしていること。家は結構な資産家らしいこと。基本的な情報はこれくらい。逆にいえばそれ以外の情報は不要なのかもしれない。そこにバカ姉弟がいて、二人に触れ合う人がいる。それだけで話は成立するのだ。

このマンガの魅力は非常に説明しにくい。「おねい」はかわいいし、つい含み笑いをしてしまうような癒し系マンガでもあるがそれだけではない何かを感じさせる。作者が作者なだけに、これは実は巧妙にしかけられたマインドコントロールなのではないかとさえ疑ってしまう。

ときどき見せる「おねい」の「ただものでなさ加減」には『お天気お姉さん』の仲代桂子のエッセンスが流れているのかもしれない。ともに周りに流されないその存在そのものが物語となる。この作品でも最後にとんでもない展開になったりしたら…なんて思ったが、バカ姉弟はそのくらいでは動じない存在感だなぁ。
バカ姉弟は普遍なる存在であり、変わることはない。その慎重さと礼儀正しさで変えようとするものを逆に虜にし、迫る悪意も世間の圧力も飲み込んでしまうことだろう。読んだ人はきっといつのまにかこの不思議な姉弟のご近所さんとなり、何故かしら気になる存在になっているはずだ。

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安達 哲

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2004.03.25

魁!マンガ週間

しばらく買いそびれていたマンガと他のページで見たオススメマンガを買い揃えたりしたので、先週はなんだかマンガ週間だった。購入マンガを同居人担当分も含めてざっと挙げると以下の通り。

『王国の鍵(4)』紫堂恭子
『万祝(2)』望月峯太郎
『バカ姉弟(3)』安達哲
『のためカンタービレ(8)』二ノ宮知子
『おるちゅばんエビちゅ(12)』伊藤理佐
『NANA-ナナ-(10)』矢沢あい
『首輪物語』山本貴嗣
『夢使い(6)』植芝理一
『よみきり・もの(6)』竹本泉
『空のむこう』遠藤淑子

さらに俺ブンさんの記事で紹介のあったものもついつい購入。

『ササメケ(1)~(4)』ゴツボ×リュウジ
『プラネテス(1)~(4)』幸村誠

ササメケの人は羽海野チカとどういう関係なんだろ。帯も書いてたし。絵の感じとかギャグの作風が結構似ている。「あれ、ハチクロの森田先輩出て来てる…」と思ったのは俺だけではないかも。
プラネテスは大好きだなぁ。これはまた別記事でちゃんと書こう。

他にも同居人が借りてきた
『DIVA(全巻)』小野弥夢
も加わって読みふける。いや~、やっぱこういう乗り越え成長モノはわかっていてもついハマって読んでしまう。
藤田和子『ライジング!』や槇村さとる『愛のアランフェス』『ダンシングジェネレーション/NY★バード』とか。
バレエものだといま一番気になってるのは山岸凉子『舞姫~テレプシコーラ』だ。なんであんなに淡々としてるのに面白いのだろう…。

BSマンガ夜話もまたセレクションが放送されたりして、読み返したい本、買ってみたい本が増えちゃうんだよなぁ。とりあげられたマンガがちょうど家にあるときはすぐ気になる部分を読み返せて凄い満足感。
こんなふうにささやかながら生涯一マンガ読みとして過ごしたいところですね。

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2004.03.14

オススメ『アマリリス』

特にネタもないので、たまにはマンガ本の紹介でも。

今回のオススメは岩館真理子『アマリリス』だ。

掲載雑誌的には女性向けなのだが、中身の間口はかなり広いと思われるので、性別問わず是非読んで欲しい作品だ。現在も連載が続いており、単行本も3巻まで発売されている。(ちなみに俺は単行本フォロワー) ジャンル的には…オトボケ恋愛コメディだろうか。

岩館真理子さんというと個人的主観では、時代的ギャグに始まり、メルヘン王道、屈折少女系、ミステリアス心理系、シュール系ギャグ回帰(?)、ナチュラルコメディと変化をしてきたように思う。
これらの中でも中期以降は心情描写や主人公となる少女の軽く屈折した想いを描く、という点にポイントが置かれていた印象がある。しかし、このアマリリスについては完全にコメディ寄りというか、三谷幸喜的な美味しいシチュエーションコメディになっている。
ひとクセある登場人物の絡みから生み出されるエピソードがとにかく妙なおかしさを持っているのだ。かつてのリリカルなシーン描写を自ら逆手にとってさらりとコメディのネタに繋げたりする。あの繊細な絵柄がそれに味わいをつぎ足す。
少女心理描き系も大好きではあるのだが、アマリリスを読むとこちら路線も捨てがたい。これまでの作品でのいちエッセンスであったエンターテイメント部分を凝縮させたものではないだろうか。

やはり特筆すべきは登場人物達の素晴らしいトボけ具合だろう。すれ違いや勘違い、エピソードは地味な日常に近いところの基本コメディパターンでありながらミョーに笑いがこみ上げる。
彼、彼女らは普通に暮らしていて、もしかしたらそのへんにいるかもしれない(いないかなぁ)トボケっぷりを持つ。物語は大きな事件というよりもそのトボケ具合の組合せによって流れていく。実際のリアリティ云々でなく、その世界の中でのリアリティに従い、至って普通に生活しているのだ。そして普通におかしい話が生み出されていくのである。それをそっと覗き込んでいる楽しみがこの作品の魅力なのだろう。

岩館作品では『森子物語』等が好きだったりしたのだが(古いか…)、今はこの『アマリリス』が一番気に入ってたりする。好きな作家の最新作が一番好き、というのは特に長いキャリアを持つ作家では凄いことだと思う。勿論違う意見の方も多いとは思いますが。
春の気配が気持ちいい季節、気負わず楽しんで欲しい本なのでした。



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岩館 真理子

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